女流棋士と棋士との違いとは?里見香奈さんの奨励会退会での疑問

将棋の世界で、
「誰が女性で一番強いか」と話題になると、
必ず名前が挙がるのが、
里見香奈さんです。

その強さから、「女性版羽生(善治)」とも呼ばれていたようです。

現在、女流棋戦のタイトル(全6つ)のうち、
5つを保持しています(女流王座・女流名人・女流王位・女流王将・倉敷藤花)。

そして、そんな里見香奈さんが、年齢制限により、
プロ棋士養成機関である奨励会を退会したとのことです。


里見香奈さんは、元々「女流棋士」で、
女流棋戦にも参加していますが、
今回、「棋士」になることができなかったということです。

ただ「棋士」の前に「女流」が付くかどうかだけなのですが、
この両者、実は全く違うのです。
「女性の棋士」を「女流棋士」と呼ぶのではありません。
「棋士」と「女流棋士」とは別物なんです。

そこで、今回は、両者の違いについて、
具体的に紹介していきたいと思います。

◎ なる方法が異なる

・「棋士」になるには?

「棋士」は、「奨励会」というプロ棋士養成機関で、
全国の天才少年・少女と対局を重ねて鑽を積み、
規定により昇級・昇段を重ねていき、
最終的に最後の難関、3段リーグで勝ち抜いて、
4段に昇段した時点で「棋士」となります。

奨励会には、大抵6級で入会し、
規定による昇級・昇段していくのですが、
まず、初段になるまでが難関です。
そして、3段になっても、半年単位で行なわれる3段リーグ戦で、
わずか上位2名しか4段に昇段することができません。

しかも、直近の62回リーグ戦には、36名も参加しています。

そのなかで、「才能溢れる36名の中で上位2名に残る」には、
凄まじい棋力・精神力・運などが合わさらないと難しいのでしょう。

しかも、奨励会での3段在籍には年齢制限があり、
原則として、
「満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合は退会となる。」
との規定があります。
多くの三段が、この年齢規定によって、
棋士を目前にその夢が絶たれてしまうのです。

情け容赦なく、非常に厳しい世界です。

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なお、直近の62回3段リーグ戦に参加していた女性は、
里見さんと、関西の西山朋佳さんの、2名だけです。

・「女流棋士」になるには?

他方、「女流棋士」の方ですが、
以前は「女流育成会」、今は「育成会」(奨励会の下部組織)において、
規定の成績(研修生がC2クラスからC1クラスへの昇級)
をおさめれば女流3級の資格が得られるのです。

育成会には、女性だけではなく、20歳以下の男性も参加可能ですが、
女流3級となることができるのは、女性のみです。
育成会には、女流棋士を目指す25歳以下の女性が参加できます。

◎ 棋力が異なる

奨励会を突破して棋士になった「4段の棋士」と、
「女流3級の女流棋士」とは、率直に言って、かなり棋力に差があります。

これは、上記のとおり制度が異なるため、
仕方がないところです。

◎ 出場できる棋戦が異なる→収入が異なる

棋士は、よく話題になる名人戦、竜王戦など、
棋戦にすべて出場可能です(女流棋戦は除く。)。

他方、女流棋士は、棋士の参加する一般棋戦には参加できず、
女流棋戦のみ参加できます。
もっとも、一部例外があり、NHK杯や竜王戦など、
成績上位や女流棋戦のタイトルホルダーに対して、
「特別枠」としての出場が可能な棋戦もあります。

女流棋戦は、一般に、棋士の参加する棋戦より、
賞金などが少なく設定されています。

よって、棋士の方が、女流棋士より、
(棋戦によるものの)1勝により得られる収入は多いと言えるでしょう。

そのため、女流棋士は、ニコ生などの中継で、
聞き手として出演するなどして稼ぐ必要があると思います。

◎ 「棋士」と「女流棋士」の今後は?

今回、里見香奈さんは残念ながら、
「棋士」になることはできませんでしたが、
今後も、女流棋士として活躍されることと思います。

ただし、今後は、必ず「棋士」になる女性が登場してくることになるでしょう。

女性棋士が多くなってきた暁には、
「女流棋士」という制度そのものが見直されることになるかもしれませんね。